パリ大学であんさんぶるスターズを学ぶ

昨年2018年10月、高校二年生の秋に、アプリ「あんさんぶるスターズ!」をインストールした。あんスタについては以前から存じ上げていた。友人が、流星隊の守沢千秋の極推しPだったのだ。イベント中の忙しい時期は本当に少しの間の代走を頼まれることもしばしばあり、あんスタのことはよく知らないが「とりあえず特大ライブしときゃいい」ってことは知っていた。あと「守沢千秋」という名前。

さて、私はこれまで、自身の性別が女性でありながらも「女性向けジャンル」というのにハマったことがほとんどなかった。腐ってはいたが、担当ジャンルで推すのは皆美少女であり、男の体になぞ毛ほども興味が湧かなかった。腰が好きだった。女性特有の流線的な体のラインで燃えた。別に同性愛者だとかそういうのではなく、ただただ「おんな」というものの造形が好きだったのだ。

あんスタについてもこれまでに2回程インストールしていたが、3日と続かなかった。ゲーム性がどうしても合わなかったのだ。女性向けゲームによくありがちな「ポチポチゲー」は、今まで男性向けゲームでシャンシャンやったり宝具打ってたりしてた私には到底飽きてしまう代物だった。

そんな私が、件の2018年10月末に3回目のインストールをしたのには理由がある。ずばり、Twitterの広告だ。Twitterのあんスタの広告には、執事喫茶の大神晃牙のカードイラストや、年上の執心の瀬名泉のカードイラストなどが使用されている。それを見て、「あーなんか気になるな」と思った。

そう、それだけ。きっかけなぞそうに過ぎない。世の中今昔どの時代だろうと、歴史的事象ほどきっかけが些細なものなのである。第一次世界大戦など、たった一人の人間が暗殺されただけで勃発した。たった一人の死が数十億人の住む世界の歴史を大きくねじ曲げるのである。

こうして私は、晴れてあんスタの3回目のインストールを迎えることとなった。今回も3日でゴミ箱行きだ、そう誰もが思った。友人にも一応「あんスタ落としたよ」と行ったものの、「はぁん、マジ?」くらいの生返事しか来なかった。誰もの期待値が0だった。

しかし、予想だにしないことが起こった。10月の末といえば、世間を賑わすパーリナイなイベントがある。そう、ハロウィン。私がインストールした時期は正確にはバンケットが開催されていた時期だったが、初めてちゃんとストーリーを全解放したイベントはKnightsのハロイベであった。

ところで、他のゲームのイベントストーリーの扱いを皆さんはご存知だろうか。大体のゲームのイベントストーリーは束の間の日常のほほん系で、スキップしてしまう人も決して少なくない。申し訳ないながら、私もその一人だった。私にとってソシャゲとは、ガチャを引いて顔の良い推しをひっ捕まえて聖杯を食わせてマーリンで筋肉増強させるものなのだ。FGOはちゃんと読んではいたが、他のゲームはスキップしていた。

さて、あんスタのイベストを読むと石が貰えるそうじゃないか。そう友人から聞いた私は、この間開放したハロイベを読もうとストーリーを開いた。ふぅ、よく分からんのに地道に読むとか面倒くさいぜ。さっさとスキップして全話読んで石を貯めてまたガチャりたいぜ。そう思い右上をタップする。…は?スキップ押せないやん…どうしてくれんの。中々なクズっぷりだが、こうして私は早送りでストーリーを読み進めた。

先程も言ったように、イベストとは大抵が日常系だ。特にハロウィンなんて、その最たるものである。人気キャラクターたちが各々仮装と言う名のエロコスプレをし(偏見)、キャッキャウフフする。そう思っていた。しかしこのあんさんぶるスターズ、なかなかどうしてストーリーが重い。私は一回早送りする手をとめ、テキストを読み始めた。やばいやんKnights…なんや瀬名泉、お前ただのストーカーやなかったんか…ていうか転校生出てきぃひんやん…これ何のゲームやねん…つかストーリー長ない?普通ありえんわイベストで30何話て…

こうしてエセ関西弁でストーリーを読み終えた私は、確かにストーリーを読んだはずなのに、より一層あんさんぶるスターズが分からなくなってしまった。

こうして私の中であんさんぶるスターズの位置付けは、キャッキャウフフな乙女ゲーから、アイドルの闇を見るゲームへと変わっていった。

現在は、朔間凛月さんと2winkのお二方たちを推している。なぜこの3人を推しているかは未だにわからない。特に、朔間凛月に関しては本当に謎なのだ。いつ推した。私はこの人のどこが好きなんだろう。こいつはいつの間にか私の「好き」の中に堂々と炬燵を持ち込み居座っていた。
2winkは顔と声と双子が好き。でもせいぜいその要素しかないのに(双子という要素以外他のキャラにも存在している要素ではある、そして他ゲーの双子は推していない)、なぜ抜きん出て彼らが好きなのかはわからない。

あんスタを始めてもうすぐ5ヶ月。転校生ちゃんに至っては、そろそろ夢ノ咲学院の一人として完全に溶けきった頃と思う。一方の私は未だにわからないことだらけだ。

あんさんぶるスターズは宗教。以前、誰かがそう言っていた。なるほど、言い得て妙だ。きっとこのあんさんぶるスターズという神様は、私の中でこれからもっと大きな存在になっていく。

あんさんぶるスターズとは一体何なんだろう。私を、こんなにも変えてしまった。まさしく、信仰の対象と言える。宗教だ。
しかし、宗教とはそもそも何を指し、一体どこへ向かっていくのだろう。あんさんぶるスターズが宗教だとするなら、それをもたらした超越的な存在があるはず。ハッピーエレメンツ?しかし私たちはハッピーエレメンツを根本的に推しているわけではない。なれば、超越的な存在は一体どこへあるのだろう。


それを学ぶべく、私はフランスへと渡った。つづく(おわり)。